ヘッジファンドにおけるAI技術の導入と将来について

ヘッジファンド AI

技術革命の著しいAI業界。今後、様々な分野においてAI技術の活用が見込まれ、AIを駆使した分野の発展とともに人間の淘汰が危惧されています。
そんななか、ヘッジファンド業界でもAIの導入がトレンドとなってきており、将来、どのような進展を遂げるのかが注目の的となっています。

ヘッジファンドにAIを活用していることが公になっていない理由とは?

日本では、金融庁によってヘッジファンドの活動に様々な規制を設けています。
なぜならヘッジファンドでは多額の資金を動かすため、好き勝手取引をされると良くも悪くも金融市場に影響を与えすぎてしまうからです。
ヘッジファンドに対する規制は、日本だけでなく、ヘッジファンドを有するどの海外諸国でも行われています。
そのため日本のヘッジファンドでは、広告宣伝を控えめにし、主に紹介によって地道に顧客を増やしているのです。
こうした背景から、一般の人々にはなかなかヘッジファンドに関する情報が入ってきにくい。
しかし近年発達の著しいAI技術は、ヘッジファンド業界にも確実に浸透しつつまります。

ヘッジファンド業界でもAIの活用はトレンドとなっている!?

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たとえば、日本ではゴールドマン・サックス出身の古庄秀樹東京大学大学院准教授が、2011年に設立したヘッジファンドプルーガ・キャピタルで、AIを利用していることを明言しています。
日本では、1980年代から90年代にかけて、AIの前身ともいえるコンピューターを活用した資産運用を試みてきましたが、運用成績は芳しくありませんでした。
そのためAI技術の導入にも否定的な意見が多かったなか、「プルーガ・キャピタル」では、数千万ページにも及ぶブログやTwitterなど各SNSでの発言を言語的に解析し、日経平均先物の売買を判断しているというのです。
確かに日本人は口コミを好む傾向にあり、ブログやSNS上にある情報を体系的に分析することは一定の効果があると考えられます。
明確な数字による実績はいまだ不明であるものの、公式HPによれば、着実に事業を拡大しているようです。
その他、世界最大級のヘッジファンドである「ブリッジウォーター・アソシエーツ」がAI運用に着手し始めているという報告もあり、AIをトレードに活用することはヘッジファンド業界でも大きなトレンドとなっているのです。

JPモルガン・チェースもヘッジファンドにAI活用を発表

モルガスチェーン ヘッジファンド

アメリカの大手銀行であるJPモルガン・チェースは前々から銀行事業にAIを取り入れてきましたが、2019年にヘッジファンド部門においてもAIを活用することを発表しました。
JPモルガン・チェースとは、アメリカだけでなく世界各国に大きな影響を与える超大手企業であり、その一挙手一投足に注目が集まっています。
以前より、AIを投資銀行業務に取り入れており、AIで投資判断がどのように改善されるかを調査するため、資産運用事業内に株式データサイエンス部門を設けるなど準備を進めてきましたが、今回ついにヘッジファンド部門へのAI導入が敢行されるとのこと。
マシン・ラーニング・ファンドという仮名が付いたこの投資ビークルは、150億ドル(約1兆6000億円)規模で運営されるらしく、この成功如何によってはヘッジファンド業界におけるAIの重要性はさらに高まっていくと考えられます。

ヘッジファンドにAIを活用したことによる成功例

ヘッジファンド 成功例

個人レベルに落とし込むと、すでにAI運用のヘッジファンドで大富豪となった人物が存在します。
数学者であるジェームズ・シモン氏です。
彼は、「資産運用の変動には法則性があるのではないか」ということに着目しました。
しかし、そのことを証明するためには過去の膨大なデータをすべて把握しなければなりません。これは途方もない作業です。
そこで、数学者としても大変優秀であった彼は、暗号解読で学んだコンピュータ技術やアルゴリズムに関する豊富な知識をフルに活用し、AIを利用してその時その時の変動に対応する予測モデルを作成していきました。
そうした地道な研究が実を結び、正確な予測モデルの開発に成功した彼は、なんと1兆円もの資産を形成するまでに至ったのです。
AI技術の活用は、ヘッジファンドにも有効であるという最高の例と言えるのではないでしょうか。

本当にAIによる運用は人による運用に勝るのか

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しかし、ジェームズ・シモン氏のような一部の天才の除き、一般のファンド・マネージャーによる運用とAIによる運用とでは、現状そこまでの差異はあるのでしょうか。
オルタナティブ資産についてのデータを提供するPreqinの報告書によれば、2014年はコンピューターの判断に従った運用の成績が人間の運用を上回ったものの、長期体な視点で見れば、人間の運用にも一定の利があることを指摘しています。
今まで人間が培ってきたノウハウはやはり有用であり、現段階ではAIにすべてを任せることは危険であると言わざるを得ないでしょう。
しかし、AIにはそれらのノウハウを吸収し成長していくというアルゴリズムが搭載されています。
そのため、今後技術の革新によって人間による運用実績を超えていく未来は十分に想定できると考えられるのです。
良いか悪いかは差し置き、AIによる人間の淘汰はヘッジファンド業界にも侵攻を始めているということです。
これからの動向に目が離せません。